- 性別:
- 女性
- 年代:
- 20代
- 婚姻歴:
- 3年
- 子ども:
- あり
訴訟で300万円を請求され80万円で和解に至ったケース
1 事案の概要
本件は、夫が妻である依頼者様の不貞に気づき、依頼者様と不貞相手である男性に対し不貞慰謝料請求訴訟を提起したという事案になります。
不貞慰謝料請求事件の場合、訴訟を提起されるよりも前に相手方の代理人弁護士から内容証明郵便が届き、交渉から始まるケースが多いように思います。もっとも、本件は最初から訴訟が提起され、依頼者様は訴訟の対応を自力で行うことは難しいとお困りでご相談に来られました。既に訴訟が提起されている以上、速やかに適切な反論を行う必要があったため、直ちに受任し訴訟対応にあたりました。
2 方針の決定
不貞慰謝料請求事件は、大きく分けて争点が2つあると言って良いと思います。
第1の争点は、慰謝料請求を基礎づける不法行為の存在、すなわち請求を受ける側が不貞行為に及んだ事実があるかという問題です。訴訟において慰謝料請求を行う側(原告)は、請求を受ける側(被告)が不貞行為を行ったという事実を立証する必要があります。この「立証」に至るまでのハードルは想像以上に高く、限りなく黒に近い証拠であっても裁判上は立証されたと認められない場合が多々あります。例えば、写真が不鮮明である場合は、自分ではないとの反論が成り立ち得ます。また、不貞相手と一緒に自宅へ入る姿のみを捉えた写真では、数分後には用事が済んで退室したのだといった反論もあり得ます。様々な反論が考えられますので、請求を行う際は、相手方に証拠を示す前に弁護士へご相談いただければ幸いです。
第2の争点は、問題となる不貞行為の結果、請求者側の被った損害はどの程度か(わかりやすく言えば金銭的にいくらと評価するか)という点です。一概に不貞行為と言っても、一度きりのものと10年間継続された行為とでは被る精神的ダメージが異なりそうだと想像していただけるかと思います。一般的に見て、精神的ダメージを与える事情が認められるほど慰謝料として認定される金額が高くなると言えます。具体的には、不貞行為が継続した期間、不貞行為を原因とする夫婦の離婚、不貞相手との同居ないし再婚、不貞相手の妊娠、謝罪の有無、社会的立場といった事情を総合的に判断して金額を決することになります。実際、慰謝料額の相場は数十万円から300万円程度と言われており、随分と金額に開きがありますが、各事件における事情の差によりこのような金額の開きが生じます。
さて、本件について訴訟上の対応を決めるにあたり、まずは上記2つの争点について検討しました。ただ、第1の点については、今回不貞が発覚した経緯として、依頼者様が不貞相手の男性の子を妊娠し、夫がDNA鑑定を実施したことが発端となっていました。不貞現場の写真やSNSでのやり取りといった証拠以上に堅い証拠が存在しており、また依頼者様としても夫への罪悪感から誠意ある対応をされたいとのことでしたので、不貞行為の存在を争わないこととしました。次に、金銭的な評価の点について、本件は夫とは離婚に至った上、依頼者様が不貞相手との子を妊娠しており、先ほど述べた不利な事情に複数当てはまる案件と言えました。一方、夫からは真摯な謝罪と経緯の説明を切実に求める様子がうかがえたことから、ある程度主張を尽くした後、謝罪の話を切り出し、解決の余地を探ることとしました。
3 期日の対応
訴訟が進行し各当事者の主張が出揃い和解期日が設けられた段階で、夫が求める謝罪や経緯説明について対応可能である旨、弁護士から裁判官に伝えました。経緯説明を行うということは、相手方が証拠を揃えて把握する事実以上の事実を場合によっては認めることになるためリスクのある行為でもありました。そこで、和解期日内で行った経緯説明に関しては訴訟上の証拠としないとの条件を裁判官に認めていただいた上で謝罪及び経緯説明の書面を作成しました。その結果、夫からは不貞相手と二人で合計180万円であれば和解に応じることができるとの回答を得ることができました。
夫との和解金額を決める一方で、不貞相手の男性の代理人弁護士とも交渉を行いました。交渉では男性の方が収入が高く、依頼者様は今後も男性との間の子を育てていく必要があること、本件不貞行為は男性側の誘いが契機となっていること等を訴えた結果、依頼者様の負担額は80万円となりました。
4 結果
最終的な慰謝料支払額を80万円で解決できたことにより、結果として依頼者様がお子様との生活に回せる金銭が少しでも増え、ご安心いただけたかと思います。また、依頼者様は、今回提起された不貞慰謝料請求訴訟と並行して夫との間で調停を行っておられましたが、調停の進捗も確認しつつ適宜アドバイスさせていただいたことから感謝の声をいただきました。
本件のように訴訟を提起されてしまった場合、専門的な対応が求められ、ご本人様にとって大きな負荷がかかるかと思います。各事案に合わせて丁寧に方針を検討しご対応させていただけますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。