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推定相続人排除審判を申し立てられ、排除が認められなかった事例

  • 【  その他  】推定相続人排除審判

ご相談内容

ある日突然、裁判所から郵便物が届いたので開けてみたら、両親から推定相続人排除(※1)審判を申し立てられていた、という方からのご相談でした。
すでに審判が申し立てられており、対応しないわけにはいかない状況でしたので、手続きの代理人としてご依頼いただくこととなりました。

【※1】推定相続人排除とは
遺留分を有する推定相続人の相続人資格を、被相続人に対して虐待・重大な侮辱・その他著しい非行を行ったことを理由として、剥奪する制度のことをいいます。
つまり、排除が認められると、排除された推定相続人は、実際に相続が発生した場合に、相続人としての最低限の権利である遺留分さえももらえなくなるのです。そもそも、財産の処分は個人の自由に委ねられていますから、本来であれば、被相続人は自分の財産(相続財産)を誰にあげようと文句は言われないはずです。しかし、そのような被相続人の意思に反してでも、相続人であることによる相続財産への支配権(相続財産がよその人のものになりそうなときに、これは近親者の財産として使うべきで、よその人が全部持っていくのはおかしいという権利)を確保しようという理由や、相続財産がすべてよその人のものになってしまうことでその後の近親者の生活が苦しくならないように近親者の生活を保障しようという理由などから、法律で遺留分という制度が定められています。このような遺留分の制度が存在する理由から考えると、推定相続人が排除され、遺留分でさえももらえなくなるということは、とても強力な、推定相続人に対して不利益な結果を招くということがお分かりいただけるかと思います。

解決方法

審判の手続き

解決までの経緯

推定相続人排除が認められる場合

先程のべたとおり、推定相続人が排除されるということは、本来法律で定められている最低限の権利ですら剥奪されるということになりますから、推定相続人の排除が認められるのは、そういった最低限の権利ですら剥奪されてもやむを得ないといえる場合です。具体的には、「被相続人に対して虐待・重大な侮辱・その他著しい非行を行った」という事実の存在が明らかで、かつ、その程度が相続的共同関係を破壊するほどに重大なものであったといえなければなりません。また、排除が被相続人の主観的・恣意的に、つまり、単なる不仲とか推定相続人のことが嫌いだからとか、そういった理由で推定相続人が排除されることの無いよう、推定相続人がどうしてそういう言動をしたのかという背景事情や、被相続人の態度及び行為もみて、虐待・重大な侮辱・その他著しい非行の程度が客観的に重大といえることも必要となってきます。

審判の手続き

審判が出るまで、最初は何度か書面で双方の主張を出し合い、双方の主張が出揃ったころに審問期日という裁判官が直接当事者から話を聞く機会を設け、そこで出てきた話も踏まえて双方が最終的な主張をまとめるという手続きを踏みます。 今回ご紹介させていただいている案件では、審判の申立書に被相続人(両親)に対して、ご依頼者さまが虐待・重大な侮辱・その他著しい非行を行ったという事情として、お金を無心したこと、農業の手伝いをしないこと、暴力を振るったこと、将来面倒をみる約束をしたのに縁を切るといって面倒をみないことなどが記載されていました。 まずはこの主張に対してこちらも書面で反論しなければなりません。そのため、このような事情が本当にあったのか、ご依頼者さまから詳細にお聞き取りをさせていただきました。お聞き取りをさせていただくと、お金を無心したと言われているが、両親の同意のもと援助してもらっていたのに、不仲になったことをきっかけに貸した金だといって強く返金を迫られすでに返金したとか、ご依頼者さまの体調が悪く本業でさえも休みがちだったので到底農業を手伝える状況じゃなかったとか、実は幼いころから父に暴力を振るわれることが日常的にある中で育ってきたという背景があるなか、父と言い争いになったときに父がものすごい勢いでこちらに向かってきたため思わず手を出したら父の顔に手が当たってしまったとか、そもそも将来の面倒をみる約束などしていないとか、申立書の記載とは異なる事情がたくさん出てきました。ですので、書面では、ご依頼者さまからお聞き取りした事情を詳細に記載し、かつ両親の主張する事実の存在が明らかでないとか、事実があったとしてもその程度は客観的に重大ではないなど、事実を丁寧に法的に評価しながら、推定相続人の排除をみとめるべきでないという主張を行いました。 その後、何度か書面のやり取りをしたあと、審問期日を迎えました。まずはご依頼者さまが裁判官から質問をされました。ご依頼者さまは淡々と、我々にお話いただいたように実際にあった出来事を裁判官に説明してくださいました。次に両親が裁判官から質問をされました。両親は裁判官に対しても大きな声で怒鳴るように、また裁判官の質問を遮って答えにはならないようなことばかりお話されました。我々代理人からも両親に質問をする機会が与えられ、いくつか質問させていただいたところ、これまでの主張とは噛み合わない矛盾点が出てくることもありました。 審問期日を終えたあとは、総まとめとして双方最終の主張書面を提出しました。最終の主張書面は、審問期日で現れた両親の主張の矛盾点も指摘しつつ、こちらのこれまでの主張を改めて整理して作成しました。 そして、いよいよ審判の日。推定相続人の排除をみとめないという審判が出ました。両親はこの審判の結果に納得できなかったのでしょう。抗告という不服申立てをされ、抗告審で追加の事情をいくつか主張してきました。こちらは淡々とこれまでと同じようにも争い、結論は変わらず。高等裁判所でも推定相続人の排除を認めないとの結論が出ました。両親はこれ以上争っても排除することができないと諦めたのでしょうか、その後審判は確定し、無事、ご依頼者さまは相続人の資格を保持することができました。

まとめ

今回ご紹介させていただいた案件は、家庭内の出来事でなんの証拠もない中で、双方の主張を出し合って争うという、審判手続としては非常に難しい争いでした。そのような状況のなか、ご依頼者さまから詳細にお聞き取りをさせていただき、さらにお聞き取りした事情を丁寧に書面に記載し、さらに法的に適切に評価していたからこそ、推定相続人の排除をみとめないという審判が出たのだと思います。 家庭内の争いは、お互いに思うことがたくさんあり、つい冷静さを失ってしまうことがあると思います。しかし、法的な争いの場では言いたいことを言うだけでなく、法的に適切な主張をしていく必要があります。 当事務所にご依頼いただきましたら、ご依頼者さまのお気持ちにも配慮しながら、ご依頼者さまの利益になるよう法的に適切なアドバイスをさせていただき、解決に向けて尽力いたします。 お困りごとがございましたら、お気軽にご相談いただければと思います。