遺産分割調停を欠席するとどうなる?出席できないときの対処法
遺産分割の問題は、あたまの痛い問題です。相続が開始されて、話し合いがうまくいかない場合に、遺産分割調停の申し立てが行われる場合があります。 この場合、複数期日にわたるほか、裁判所は平日にのみ開かれるため、仕事の関係で参加が難しいといった自体が起こりえます。その際に調停を「欠席」するとどうなるのか、また、出席できない場合の対処法について、ご紹介いたします。
遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、相続が開始された場合に、相続人同士での意見調整がうまくいかず、当事者のみでは話し合いが奏功しないため、裁判所の介入により、合意を促す手続きです。つまりは、「話し合い」の延長であって、よく、当事者同士の話し合いがうまくいかない場合に、「間にだれか入ってもらう」などといったことを行いますが、まさに、調停とは調停委員というどちらにも与しない専門的第三者が間に入ることで、意見調整を行い合意形成へ導く手続きです。 一般に、相続などに始まる家庭内、親族間の問題は「家事事件」として扱われます。また、離婚などの場合などのように、遺産分割に関しては、調停の前置が法的に要求されません(家事事件手続法257、244、人事訴訟法2条)。したがって、遺産分割に関しては、調停を申し立てず、いきなり審判を申し立てることが可能です。 しかしながら、もめごとは当事者間の話し合いで解決させるというのが、法の趣旨であることから、遺産分割審判を申し立てた場合であっても、調停に付されることが一般的です。 また、家庭内のことは、法はなるべく立ち入らないといった原則も、家庭裁判所が調停を勧める理由と考えられます。
遺産分割調停を欠席した場合はどうなるか
調停は話し合いの延長であり、また、遺産分割協議は前提として、「相続人の全員の参加・合意」であることから、原則的には、調停の欠席の不利益は、法的には調停の不成立以上のものはありません。 しかしながら、話し合いに積極的でない姿勢は、遺産分割に協力的ではないとして、他の相続人からの印象が悪くなり、自己の期待するような遺産分割の内容の実現に、他の相続人が合意してくれないといった事実上の不利益が生ずる可能性はあります。 また、調停後の審判を見越すと、不利益が生ずる可能性が高いでしょう。 このようなことから、仕事などの都合により、やむを得ず調停期日は欠席するといった場合には、その旨を裁判所へ伝えるといったことは、その後の話し合いをスムーズに進める上で必要な要素といえるでしょう。
調停案がある程度できている場合に欠席するには
調停委員の関与による話し合いが奏功して、ほとんどその内容が合意に至っているような場合に、何もせずに期日を欠席してしまうことは、もったいないことです。 このような場合であって、事前に調停案が提示されている場合には、あらかじめその内容に合意する旨を書面で表示することができます。また、調停案が提示されず、まだ話し合いがまとまっていない場合で、もはや自己が遺産分割協議に参加しない場合(遺産が不要といった場合)は、相続分の譲渡または、放棄の証明書を提出するといった方法も考えられます。 また、他の手段としては、弁護士に依頼をしている場合には、代理人として弁護士に調停に参加してもらうといったやり方もあります。 遺産分割協議でもめている場合で、家庭裁判所の調停となりそうであれば、できるだけ早い段階で弁護士に相談する方が、結果的に早期に問題が解決するといった場合があります
遺産分割調停と遺産分割審判の違いとは
前述のとおり、遺産分割調停は「話し合いの延長」であることから、手続きの進め方や内容については、柔軟な対応がされています。したがいまして、本題の前提となる事情などについても、あわせて調停の場を借りて話し合うことができます。 一方で、遺産分割審判は、裁判に近い手続きとなり、裁判官による証拠調べや事実の調査が行われるため、主張・立証が厳格に行われます。したがいまして、審判に欠席した場合には、調停の場合と異なり、主張がされないといった不利益を被ることとなります。 また、審判においては、本題以外の部分については、別の手続きを取らなければならない場合もあり、調停に比べると柔軟性に欠ける部分があります。さらに、遺産分割審判の場合には、法定相続分に従って、その内容が判断される場合がほとんどとなります。そして、最終的には、調停と最も異なることは、話し合いで決めるのではなく裁判所が判断するということです。
遺産分割調停などの話し合いに積極的ではない場合はどうなるのか
話し合いに積極的ではない場合、将来的にはいくつかのリスクを抱える場合があります。そのリスクとは、親族間の親交の断絶や、今後、別の相続が開始した場合に、他の相続人の協力を得られないといった場合です。 したがいまして、遺産分割協議の手続きには、可能な限り積極的に協力するのが望ましいでしょう。とは言え、当事者同士の話し合いでは、「声の大きい人」の主張がとおるといったことがあります。このような不利益を避けるといった目的で、早期に弁護士に介入してもらうといったことが考えられます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。遺産分割調停に欠席することの直接的な不利益は小さいものと思われます。しかしながら、協力的な姿勢ではないと他の相続人に思われることの事実上の不利益や、その後の話し合いが奏功しないといった、結果面の不利益が生じる可能性があります。このような危険を避けるためにも、なるべく積極的に協力するようにしたいものです。