コラム

家族信託で信託財産にできる財産は?

  • 遺産・相続

家族信託をすると、財産を希望する人に残すことができるだけではなく、その財産の詳細な管理方法まで決めることができるので、相続対策に有効です。
家族信託によって信託財産とすることができるのはどのような財産なのでしょうか?
今回は、家族信託の対象にできる信託財産について解説します。

1. 信託財産にできる財産

まずは、信託財産にできる財産の種類を確認しましょう。 信託財産にできるのは、基本的に委託者のあらゆる財産です。具体的には以下のようなものが対象となります。

  • 現金、預貯金

現金や預貯金については、信託契約によって受託者に管理・処分の権限が移ります。

  • 有価証券

上場株式や非上場株式、債券などの有価証券も信託財産にできます。この場合、議決権は受託者に移るのが基本ですが、委託者に残すこともできます。

  • 金銭債権

貸付金の請求権や売掛金、賃料請求権やリース・クレジット債権などの金銭債権も信託財産とすることができます。

  • 動産

たとえば絵画や骨董品、車両なども信託財産にできます。ペットも法律上は「物」扱いとなるので信託財産として設定可能です。

  • 不動産

土地や建物の所有権や借地権なども信託財産にできます。不動産を家族信託の対象とした場合、受託者が管理・処分を行います。

  • 知的財産権

特許権や著作権などの知的財産権も信託の対象になります。

2. 信託財産にできない財産

次に、信託財産にできない財産をみてみましょう。

  • 生命や名誉
  • 債務

債務自身は信託の対象になりませんが、積極財産とセットになった債務は対象となりますし、別途債務引受をすることができます。債務引受をすると、債務の信託と同じ結果を実現できます。

  • 一身専属権

生活保護の受給権や年金受給権などの一身専属的な権利は家族信託の対象になりません。

以下では、家族信託を設定する際に特に注意すべき財産について、より詳しく解説していきます。

3. 上場株式の信託について

上場株式を信託するときには、注意が必要です。
上記で説明したように、上場株式も信託財産とすることは可能です。法律や制度により禁じられているわけでもありませんし、性質上信託財産にできないということもないからです。
しかし、実際には家族信託に対応している証券会社が少ないため、上場株式を信託財産とするためのハードルが高くなっています。ネット証券でも信託財産用の口座解説に対応していないことがほとんどです。
また、信託口の口座開設ができる証券会社でも、口座開設の際には受託者だけではなく委託者に対しても意思確認が行われます。そこで、上場株式を信託する場合には、そういったことを見越して契約内容を定める必要がありますし、証券会社と打合せをしておくべきです。
また、株式を信託の対象とすると、受託者が株式取引を行えるようになりますが、株式の場合には現金や預貯金などとは異なり、運用に失敗して財産が目減りする可能性があることに注意が必要です。信託をする時点において、どのような運用方針で進めていくのかしっかりと取り決めておく必要があるでしょう。

なお、今はまだ上場株式の信託には選択肢が少ない状況ですが、将来的には信託口口座を開設できる証券会社が増えてくるでしょう。

4. 債務の信託について

次に、債務の信託と債務引受について説明しておきます。
まず、信託の対象にできるのはプラスの資産のみであり、マイナスの財産である債務は信託の対象になりません。
しかし、事業を信託する場合などにはプラスの資産だけではなく事業関係の負債もまとめて任せたいということがあるでしょう。そのような場合には、「債務引受」を利用して、債務を受託者に引き継がせることができます。債務引受とは、引受人が元の債務者から債務を承継し、債務を支払うことです。債務引受をすると債務が受託者に移転するので、受託者は信託財産を使って債務を履行することになります。
つまり、プラスの財産については信託財産として受託者に信託し、債務については債務引受によって対応することにより、プラスの資産とマイナスの負債の両方をまとめて受託者に引き継がせることが可能となります。

なお、債務引受には重畳的債務引受と免責的債務引受があります。重畳的債務引受ではもともとの債務者の責任も残りますが、免責的債務引受では元の債務者の義務がなくなるので、債権者の合意が必要です。そこで、家族信託設定の歳に免責的債務引受を定めるのであれば、事前に債権者の同意が取れるのかについても検討しておく必要があります。

家族信託できる財産とできない財産については上記の通りですが、上場株式や負債のように特別な注意が必要な財産もあります。