滋賀、高槻、立川、横浜の債務整理、借金問題の無料相談を受付。借金の悩みは弁護士にお任せください。
当事務所に依頼された借金問題を解決した方の声をご紹介します。
<ご相談内容>
今回のご依頼者は、正社員として固定した収入はあったのですが、FX取引に手を出して失敗し、損を取り戻そうと新たに借金をして追証を入れて再び取引に手を出してまた失敗し、さらに借金して取引に失敗し、ということを何度も繰り返した結果、最終的には借入総額が1500万円を超える莫大な額にまで膨れ上がってしまい、到底ご自身の収入の範囲では返せない状況に追い込まれてしまった、という状況で、弊所にご相談に来られました。
<自己破産か民事再生か>
ご相談の件は、借金の総額からすると、任意整理で多少利息をカットした程度では到底借金を返し切れそうにもなく、法的整理(自己破産または民事再生)によらざるをえない状況であることが明らかなケースでしたので、ご依頼者には、「自己破産か民事再生かどちらかの手続きを取る必要がある」ということをご説明しました。そして、今回の方針としては、自己破産の申立てが最も望ましいのではないか、との弊所担当弁護士の見解をお伝えしました。
自己破産は、裁判所から「免責許可決定」を受けることにより、借金をゼロにすることが可能な手続きです。一方、民事再生の場合は、借金がゼロになる訳ではなく、原則として借金を5分の1(※総額により例外あり)に圧縮して、原則として3年間(最大5年間)のうちに返済する、という手続きです。
どちらも選択できる場合、最終的に借金がゼロになる自己破産の方が、圧縮されるとはいえ借金返済の義務を負うことになる民事再生よりも、ご本人にとっては生活を再建するための負担が少なくなる、という点で、メリットが大きいことが多いです。
もっとも、自己破産の場合には、借金を作った事情の中に「免責不許可事由」(※例えば、ギャンブルで借金を作った、とか、浪費をしていた、など)があると、免責(借金をゼロとする)という許可を受けられなくなる場合があります。
これに対して、民事再生の場合には、債権者の過半数の同意があれば、免責不許可事由があるようなケースでも再生計画が認可される(借金を圧縮して月々の返済額を減らせる)ことになっていますので、免責が得られないようなケースでも借金の圧縮ができる点に、メリットがあります。
FX取引は、投機的取引とされてギャンブルに準ずる扱いを受けることから、免責不許可事由となるおそれがありました。また、インターネット上では「FXで作った借金は自己破産できない」といった確定的な情報も散見されることから、ご依頼者もこの点を非常に気にしていました。
たしかに、今回は、借金の総額がとても大きく、免責不許可となる可能性がゼロとは言えないケースでした。もっとも、弊所においてこれまで取り扱った事案上、裁判所が、単に「FXだから」と言って一概に免責不許可とするスタンスではなく、破産者が誠実に事情を説明し、再発防止策に真剣に取り組むなどの姿勢を見せることで裁判所の心証が良くなり、免責許可決定を得られるケースも多いということを説明したところ、依頼者の方も、この機会に自らのいわゆるギャンブル依存症的な心の弱さを克服し、生活再建に前向きに取り組みたい、との強いお気持ちがあることが確認できたため、自己破産手続を選択することになりました。
<離婚>
破産の準備に入ったあと、残念ながら、依頼者の方は妻と離婚することになりました。妻に隠れて借金をしてFXをしていたことが発覚したことで信頼関係が崩れ、修復不可能な状態に至ってしまったのです。
離婚にあたっては、財産分与により夫婦の共有財産を清算したり、養育費の取り決めなど、様々な取り決めをすることがありますが、破産手続中は、こうした取り決めが免責不許可事由に触れないように、細心の注意を払う必要があります。
弊所からは、こうした点について専門家としてアドバイスを行い、破産手続上悪影響が出ないように離婚時の取り決めを行ってもらいました。
<手続申立てと管財人面談>
手続申立てにあたっては、免責許可決定を得る可能性を少しでも高めるために、以下のような取り組みを行いました。
取引により借金が膨らんでいく過程で問題があった事情一つ一つを、裁判所に対して、詳しく、かつ、正直に説明し、生活再建に向けた取り組みを行っていることを伝えました(反省文を作成し、ギャンブル依存に関する医療的なケアに取り組んでいることを報告するなどしました)。
依頼者には親族からの借金もあったものの、そのご親族に事情を理解してもらって借金を放棄してもらいました。こうすることで、一般債権者に少しでも多くの配当が回るようになり、債権者に対する反省の気持ちの表明ともなります。
こうした取り組みを行ったことで、手続開始決定後に行われた管財人との面談では「報告書の内容がちゃんとしており、(免責に向けて)問題ないと考えている」との回答を得ることができ、最終的には、管財人の意見通りに裁判所から免責許可決定を得ることができ、無事、債務をゼロにすることができました。
<終わりに>
依頼者の方は、破産手続に非常に真面目に取り組まれ、二度と同じような間違いをしないとの強い気持ちで再発防止のための取り組みを行ってきました。
このことが評価され、裁判所からも免責許可決定が得られたばかりではなく、手続終了後に、いったんは借金問題で離婚することとなった妻にも真摯な反省の気持ちが伝わり、復縁する方向で話しが進んでいる、知らせをいただけました。ご本人の再出発のためにお力になれたことで、弊所としてもとても嬉しく思っております。
免責不許可事由がある場合であっても、専門家の適切なアドバイスのもとに手続きを行うことで、免責を得られるケースは多々あります。同じような事情でお悩みの方は、まずは弁護士にご相談ください。
以上
高槻大津様
第1 事案の内容
当事務所で受任した法人及び法人代表者の破産申立事件についてご紹介します。
事案の内容としては、従前から資金繰りが悪化していた法人が新型コロナウイルスの影響により経営回復が不可能になったため、法人代表者とともに破産申立てをしたというものです。
新型コロナウイルスの影響による連鎖倒産が相次いで報道されています。もちろん、破産に至らないことが一番ですが、万が一そのような事態になった場合にどのような手続になるかを事前に知っておくことは有益かと思い、本事例を紹介させていただきました。
第2 破産申立ての際に留意すべき点
1 予納金の額
破産を申し立てる場合、弁護士費用、実費(印紙代、郵便切手等)に加えて、予納金が必要になります。東京地裁の場合、法人破産を申し立てると、破産管財人が就任します。破産管財人には弁護士が就任し、裁判所に代わって破産事件処理を担当します。破産管財人が就任する事件(以下、「管財事件」といいます。)の場合、管財人の報酬を予め裁判所に納付しなければなりません。これが予納金と呼ばれるもので、東京地裁の場合、最低でも20万円からになります。分割納付も一定の場合認められますが、東京地裁の場合、最大でも4回までしか認められません。法人が破産申立てに至っている段階においては、法人はもちろん、法人代表者にもキャッシュが存在しないことが多いため、この予納金を準備することに難儀します。しかも、予納金の額は定額ではなく、申立人代理人弁護士と裁判所が協議し、主に事件の困難性や破産管財人の仕事の多寡を踏まえて、事件ごとに決定されます。つまり、裁判官から予納金の額について告知があるまで、今回の破産申立ての予納金が最終的にいくらになるかがわからないのです。ですので、破産申立てをするに際して、親族等から借入れを行う場合には、弁護士費用や実費のみならず予納金として30万円から100万円程度借入れをしておくことが望ましいです。
では、どのような事情が予納金の額に影響を及ぼすのでしょうか。
まず、法人に破産申立直前まで活動していると、破産により利害関係者に多大な影響が生じ、管財人としても対応する事項が増えるため、予納金の額が増加する傾向にあります。
次に、法人所有の不動産や金融資産があると、それを換価する必要があります。不動産の場合、管財人が売買の仲介業者を通じて、不動産の買い手を探します。株式の場合、管財人が株式の引き取り先を探します。このように、法人所有の不動産や金融資産があると、管財人の仕事が増加するため、予納金の額が増加する傾向にあります。
そして、法人が回収可能性のある売掛債権を保有している場合、管財人が法人に代わって当該売掛債権を回収する必要があります。しかし、売掛債権の相手方からすれば、破産手続が開始した法人に対して、売掛金を支払うというのは心理的な抵抗が強く、交渉が難航する場合がしばしばあります。そのため、法人に回収可能性のある売掛債権があると、管財人の仕事が増加するため、予納金の額が増加する傾向にあります。
本件では、これらの事情がいずれも存在しませんでした。そのため、裁判所に対して、予納金の額を低額にすべきであると主張して、裁判所が当初提示してきた額の約半分に予納金の額を減額することができました。
2 連帯保証人に対する請求の件
破産申立てを行い、法人が消滅し、かつ法人代表者が免責許可決定を得た場合、法人代表者は会社・個人双方の債務について支払義務が免除されます。
しかし、だからといって、連帯保証義務が消滅するわけではありません。例えば、法人の借金について親族や懇意にしている取引先が連帯保証人になっている場合には、法人が消滅し、かつ法人代表者が免責許可決定を得た場合であっても、引き継ぎ連帯保証人は連帯保証義務を負います。
この場合、原則として連帯保証人は一括で債務を返済しなければならないため、連帯保証人に支払能力がない場合には、連帯保証人も破産申立てをする必要があります。
このように、破産申立ては連帯保証人に多大な影響を与えるので、破産申立てをする前に連帯保証人に対して連絡をしておくことが必要です。お叱りを受けることがあるかもしれませんが、黙って破産申立てをするよりも誠実かと思いますし、事前に連絡をしておけば、連帯保証人の側でも何らかの対処を行うことが可能な場合があります。
本件においても、法人の借金について親族が連帯保証人になっていたため、破産申立てをする前に、法人代表者から連絡をしてもらいました。
3 郵便物等の転送
破産手続中は申立人宛の郵便物等は破産管財人の弁護士事務所に転送されます。そして、破産管財人は転送されてきた郵便物等を開披して、内容を確認することができます。
郵便物等の中に裁判所に報告していない資産や負債に関する書類がある場合、免責の判断に影響を及ぼします。ですので、破産申立てをするにあたっては、未申告の資産や負債がないかどうかを慎重に確認する必要があります。
また、破産手続中に申立人に送られる予定の郵便物等の中に重要かつ緊急なものが含まれている場合には、事前に申立人代理人弁護士または管財人に伝えておく必要があります。
本件では、破産申立て前に、未申告の資産や負債がないことを法人代表者に確認したので、未申告の資産や負債はありませんでした。
他方、管財人に転送された郵便物等の中に公共料金の支払督促書があったので、早急に代表者の住所に郵送してもらいました。
第3 法人及び法人代表者の破産申立てを弁護士に依頼するメリット
これまで見てきたとおり、法人及び法人代表者の破産申立てをするにあたっては、様々な事情を考慮する必要があります。法人の破産申立てをする場合は法人代表者も破産申立てをする場合が多く、その場合代表者ご本人では適切な判断することは難しいかと思います。仮にご本人で判断できたとしても、ご本人で破産申立ての手続をすることは、大変な負荷がかかります。その点、弁護士にご依頼いいただければ、破産申立てにあたってどのような点に留意すべきかを事前に知ることができますし、予納金の額についてもご本人に代わって裁判所と協議することができます。
本件についても、当事務所が法人及び同法人代表者の代理人として、裁判所や管財人の直接の連絡窓口となり、各種必要な書面も作成いたしました。事件終了後、同法人代表者から心理的・事務的な負担の大部分が軽減されたと感謝の言葉をいただくことができました。
本記事を最後までご覧いただきありがとうございます。
以上
T様様
<事案の内容>
当事務所で受任した小規模個人再生申立事件についてご紹介します。
事案の内容としては、住宅ローンを抱えている依頼者が、自宅を残しつつ、残債務について債務整理を行うため、当事務所が依頼者の代理人として小規模個人再生の申立てをしたというものです。
債務整理の中で自宅を残せるのは原則として任意整理と個人再生になります。本件では5年以内に可処分所得で住宅ローン及び残債務を完成するのは困難であったため、個人再生を選択しました。
個人再生(個人民事再生)には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続が用意されています。小規模個人再生の方が使い勝手がよいので、実務上よく利用されています。
<本件のポイント>
(1) 債権者対応
本件では、個人再生手続の申立前に、債権者のうちの1社が依頼者に対して訴訟を提起し、判決を得ていました。そのため、債権者から強制執行、具体的には給与差押えをされるリスクがありました。
法律上、個人再生手続の開始決定があったときは、再生債務者の財産に対して既になされている再生債権に基づく強制執行の手続きは当然に中止されます。そのため、債務者が個人再生申立をした場合、個人再生手続の開始決定が近日中に出るため、債権者が強制執行をする意味は通常ありません。
しかし、本件では個人再生申立まである程度の時間がかかることが予想されたため、個人再生手続の開始決定がなされるまでの間に、債権者から給与差押えを受けるリスクがありました。給与差押えを受けた場合、本件の存在が依頼者の職場知られることになり、依頼者の処遇ひいては雇用関係にまで大きな影響を及ぼす可能性があります。最悪の場合、依頼者が退職して、返済原資を確保できなくなる可能性もあります。
そこで、判決言渡日から個人再生手続の開始決定がなされるまで、債権者に小まめに電話をして進捗状況を報告し、併せて給与差押え等の強制執行は控えてほしい旨と繰り返し伝えしました。結果的に、債権者は依頼者に対して給与差押え等の強制執行をしてこなかったため、依頼者の職場に本件の存在が知られることはありませんでした。
(2) 履行可能性
履行可能性とは、個人再生手続上、弁済計画に基づいて算出された金額を法律で定められた期間(原則3年、例外5年)内で返済をできる可能性をいいます。
破産と異なり、個人再生では、再生計画認可決定が下りた後、債務者は債権者に対し再生計画に従った弁済をしていかなくてはなりません。加えて、住宅資金特別条項を定めた再生計画案の場合は、再生計画が遂行される積極的な可能性が必要であるため、住宅資金特別条項を定めない再生計画案と比べて、再生計画の履行可能性が厳しく判断されます。
個人再生における履行可能性は、基本的に、債務者が毎月継続的に又は反復して得る収入額(給与等)から支出額(生活費、住宅ローン等)を控除した金額(可処分所得)が、再生計画において予定している毎月の弁済額を上回るかどうかという点が判断されます。裁判所において、可処分所得が再生計画において予定している毎月の弁済額を上回ることはないと判断された場合には、裁判所は再生計画不認可の決定を下します。
本件では、可処分所得が毎月の弁済額をギリギリ上回る状況だったため、個人再生手続の申立後、裁判所から厳しいチェックが入ることが予想されました。
そこで、必須書類とされている家計収支表に加えて、家計収支表記載の収支を裏付ける資料(給与明細、各種請求書、通帳の写し)及びそれに関する事情説明書を作成して、裁判所に提出しました。事情説明書には、一時的な支出(車の修理代、冬季の燃料費等)があった場合、その支出は一時的なもので今後発生する予定はないことについて記載をしました。
加えて、直近2年間程度の実績から見て、定期的なボーナスを見込むことができる場合にはそのボーナスも可処分所得に加えることができるので、ボーナスを可処分所得に加え、不足の事態が生じても履行可能性は維持できる旨の説明をしました。依頼者は個人再生手続の申立ての1年程前に同業他社に転職をしており、その会社は営業実績によりボーナスが支給される報酬形態になっていたため、定期的なボーナスを見込むことはできないのではないかと裁判所から指摘を受けました。しかし、依頼者は前職で大きな実績を上げており、かつ、現在の会社でも営業実績に基づきボーナスが一度支給されていることを理由に、定期的なボーナスを見込むことは十分可能である旨を説明しました。事情説明書に加えて、前職での営業実績を裏付ける資料(表彰状、トロフィー等)を依頼者から取り寄せて提出したところ、裁判所から定期的なボーナスを見込むことが可能であると判断してもらうことができました。
<個人再生手続の申立てを弁護士に依頼するメリット>
これまで見てきたとおり、個人再生手続の申立てをするにあたっては、様々な対応が必要になります。債権者対応及び裁判所対応は専門的知識が必要ですので、ご本人で対応することは難しいと思います。
弁護士に個人再生手続の申立てをご依頼いいただければ、弁護士がご本人の代理人として、債権者及び裁判所と交渉いたします、その結果、ご本人の負担が軽減され、個人再生計画認可決定を得られる可能性が高くなると思います。
個人再生は、手続きが面倒であるというデメリットはありますが、他方で、自宅は残しつつ大幅な債務圧縮が図れるという大きなメリットがあります。デメリットについては弁護士に依頼することで大部分を解決することができます。
本記事を最後までご覧いただきありがとうございます。ご参考になれば幸いです。
K様
<概要>
(1)事案の内容
ご依頼者様は短期間で高級外車の乗り換えを繰り返し、支払い不能(※1)になってしまった方でした。一番初めは、自動車がなければ生活が困難な地域に住んでいたことから、必要な範囲で中古の外車をローンを組んで購入し、順調に毎月の給与の範囲内でローンの支払いを行っていました。しかし、その自動車に不具合が生じたことをきっかけに、より良い自動車に乗りたいという欲をもち、少し背伸びをした高級外車に乗り換えました。もっとも、乗り換えた自動車もローンを組んで購入し、この自動車のローンの支払いも毎月の給与の範囲内で行っていました。ところが、昨年より猛威を振るい始めた新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ご依頼者様の給与は下がり始めました。そうであるにもかかわらず、高級外車を乗る中でより良い自動車に乗りたい、新しい自動車に乗りたいという欲をもっていたご依頼者様に、自動車販売の営業担当が、新しい自動車の購入を勧めたことをきっかけに、ご依頼者様は乗り換えてそれほど時間が経っていないのに、さらに高級外車に乗り換えることとしたのです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響がなければ、ご依頼者様はさらに乗り換えた自動車のローンを支払うことができたのかもしれません。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響はご依頼者様の想像をはるかに超えており、新しい自動車を購入した直後、ご依頼者様の職場の仕事量が大幅に減り、それに伴って毎月の給与も大幅に下がってしまったため、ご依頼者様はたちまち支払い不能(※1)に陥り、弊所にご相談くださいました。
【※1】支払い不能
破産の手続きが開始する要件の一つ。
債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態・・・をいう(破産法2条11号)。
(2)ご依頼者様の希望
毎月の給与から自動車のローンを支払うことができないので、破産手続きをしたいとのことでした。
(3)方針の決定
みなさま、「破産」という手続きにどのようなイメージを持っておられるでしょうか。借金が簡単に帳消しになるというイメージをお持ちの方、日常生活に多大な不利益が生じるのではないかというイメージ(ご不安)をお持ちの方、さまざまかと思います。
たしかに、破産の手続きにおいて裁判所が免責許可決定を出せば、対象となっている債務についてはそれ以上返済をしなくてよくなります。しかし、裁判所という国の機関が、国民個人の債務について「返済しなくてよい」と判断することは、その影響力の大きさに鑑みれば簡単なことではありません。たくさんの必要書類を提出しなければなりませんし、どうして支払い不能に陥ったのか、支払い不能に陥ったことについて現在どのように考えているのか、免責許可決定が出た場合それ以降どのように生活していくつもりでいるのか等、様々なことを裁判所に説明をして、裁判所が「それならこれまでの債務は返済しなくてよいとして生活の立て直しをしてもらおう」と考えるまで説得する必要があります。
他方、破産手続きをすることによって、その後7年間は新たに破産手続きができない(破産法252条第1項10号参照)とか、ローンの審査に通りにくくなるといったことはありますが、たちまち職場やご近所さんに破産手続きを行っていることが知られるなど、日常生活に多大な不利益が生じるということは考えにくいといえます(もっとも、一部の職業については一定期間制限を科されるということがあるので、詳しくは弁護士にご相談ください。)。
ご依頼者様は、破産手続きについて特に前者のイメージ(借金が簡単に帳消しになるというイメージ)を強くお持ちでしたので、破産手続きをとるとなれば我々は申立て代理人として精一杯お仕事させていただくが、やはりご依頼者様自身、破産手続きは簡単なものではないことをご理解いただきたいということ、裁判所を納得させるため自身の手続きであることの自覚をもって、たくさんの書類を提出したり、裁判所との約束は書類の提出期限ひとつをとっても必ず守らなければならないということ等を丁寧にご説明させていただきました。
また、ご依頼者様の場合、短期間で高級外車を2回も乗り換えていることが「浪費」にあたり、原則としては「免責不許可事由(※2)」に該当するため、「裁量免責(※3)」を得られるように手続きを進めていかなければならないことから、さらに破産手続きはハードなものになるということもご説明させていただきました。
ご依頼者様には以上をご理解いただいたうえ、破産手続きを行うということで方針決定いたしました。
【※2】免責不許可事由
破産法252条1項で定められていて、各号のいずれかに該当すれば原則として免責許可決定が出されないことになるものです。
同項4号では浪費行為が免責不許可事由として定められています。
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」
【※3】裁量免責
破産法252条2項で定められていて、同条1項各号のいずれかに該当する場合でも例外的に免責許可決定が出される場合をいいます。
「前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は破産手続き開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」
<解決>
先程述べたとおり、今回のご依頼者様の場合、短期間で2回も高級外車を乗り換えたことが原因で支払不能に陥っているため、ご依頼者様の行為は「浪費」にあたり、原則として免責不許可事由にあたることはやむを得ませんでした。
そこで、例外的に裁量免責を獲得するため、まずはご依頼者様にどうして支払い不能に陥ったのか、支払い不能に陥ったことについて現在どのように考えているのか、免責許可決定が出た場合それ以降どのように生活していくつもりでいるのか等を考えて、「反省文」を書いていただくこととしました。しかし、いざ反省文を書くとなれば、なかなか考えを文章化するというのは難しいことです。そこで、申立代理人として、さらに進んでご依頼者様のお考えを深く掘り下げ、ご自身の言葉で反省の気持ちを文章化できるようお打ち合わせをさせていただきました。
また、申立代理人としても、裁判所に対して、ご依頼者様の免責不許可事由該当行為(浪費)は悪質なものではないということや、収入が大幅に減少したことはご依頼者様としては如何ともし難い事由であったこと、ご依頼者様が反省しており、今後の生活の立て直しが可能であること等、裁判所が免責許可することが相当であるという事情説明・意見を提出いたしました。
これらの活動が功を奏して、無事にご依頼者様に免責許可決定が出され、ご依頼者様は新たな生活の一歩を踏み出すことができました。
<まとめ>
今回のご依頼者様は、支払い不能になってすぐご相談に来てくださいましたので、支払い不能の状態が悪化することなく、無事に免責許可決定も出て、現在、新たな生活を始めておられます。債務整理のご相談は躊躇われる方が多い印象ですが、手遅れになってしまえば本来可能であったはずの生活の立て直しが不可能になってしまい、現在お困りの状況よりもさらに大変な状況になることもあります。
弁護士にご相談いただきましたら、新しい道が開けるかもしれません。お気軽に一度、ご相談いただければと思います。
J様
<相談内容>
依頼者は、収入はそれなりにある方でした。しかしながら、お子さんの教育費(私立の授業料や塾など)や住宅ローンの支払いが段々と過大な負担となり、生活を圧迫するようになりました。それでも結構長い間踏ん張って、生活費等のために借り入れを繰り返した結果、全体として相当大きな債務を抱えてしまいました。将来を見据えてご家族と相談された結果、債務整理を決心されて当事務所にご相談に来られました。
<破産か個人再生か>
弁護士が行う個人の方の債務整理には色々と種類がありますが、ほとんどが破産、再生(個人再生)、任意整理という3つの手続になります。
破産手続は、ある時点でのプラスの財産とマイナスの財産を確定させ、一定保護されている財産を除いて清算してしまい、最終的には免責(債務の支払いを法的に免れること)を目指す手続です。
再生手続は、破産と同様に清算手続なのですが、諸々の理由から破産手続には向かないケースについて行うことが多いです。債務の支払いについて、全額ではないものの大きく圧縮することで、一定の財産を守りつつ債務の弁済も行うことができる手続です。
任意整理は、基本的には残る債務をそのまま支払うのですが、支払計画を現実的な内容に見直すことで、生活の安定と債務の弁済を両立させるために行うものです。
本件の場合、住宅ローンを含めて債務総額が相当大きかったので、任意整理をしても依頼者にメリットが乏しいケースでした。残る破産か個人再生かについて、依頼者としては、財産(特に自宅の不動産)がなくなってしまうことは避けたいということでしたので、個人再生を目指すこととなりました。
<個人再生のメリット>
個人再生は、特に給与所得者であり住宅ローン債務がある方にメリットのある制度であると言えます。安定収入があることで、住宅ローンをそのまま支払いつつ、その他の債務の総額をぐっと圧縮して支払うことが許されています(住宅ローン特別条項を用いた給与所得者再生)。本来であれば債務整理の手続内において債権者は平等に扱うこととされているのですが、その例外となるのです。本件は、まさにこのメリットを享受することを期待して個人再生を目指すケースです。
もっとも、住宅ローン特別条項付きの給与所得者再生も含めて、個人再生手続においては、破産手続との比較で「清算価値保障原則」という考え方があります。法律上定められているわけではないですが、解釈で認められているものです。簡単に言えば、破産をした場合と比較して個人再生の場合が債務者に有利に(というより債権者に不利に)ならないように、破産をした場合に清算対象となる財産の価値をベースとして、個人再生手続においては、その金額を下回らないように債務額を圧縮するべきだという内容です。
基本的には、それなりに財産(住宅以外)を持っている方の場合は、清算価値保障原則が適用されることが多く、財産が少ない方は、債務の総額の5分の1を支払うとなることが多いです。それ以外の場合もありますが、ここでは記載を割愛します。
本件の依頼者は、退職金の支払い予定もあり、生命保険にも加入されていて、それなりに財産を持っている部類の方でした。他方で、住宅ローンを除く債務の総額もそれなりにある方で、厳密に計算すると清算価値保障原則の適用場面にはなるものの、その差はわずかというところでした。
<清算価値保障原則の例外の主張>
色々と調べてみましたが、清算価値保障原則の例外が認められると説明するものは見当たりませんでした。しかし、そもそも清算価値保障原則が法律解釈によるものですので、当然解釈で例外が認められるべきです。そこで以下のように考えてみました。
破産手続との比較なのですから、破産の場合に清算対象になる財産のことだけでなく、破産した場合に当然かかる経費も考慮するべきです。具体的には、破産管財人の報酬や実費等の決まった費用、公租公課など通常の債権から優先して支払われる債務については、これらが支払われることが一般債権者を害することはありません。そうすると、破産になった場合に管財事件となることが想定されるケースでは、清算価値保障原則の中身として、真に清算対象となる財産だけでなく、破産申し立てをしたときに必ず発生する費用も考えることが自然となります。
何か根拠があるわけではないものの、このようなことを一生懸命に上申書にまとめて裁判所に提出しました。
<まとめ>
正直自信があったわけではありませんでしたが、結論としては、本件では清算価値保障原則を適用せずに総債務額ベースで計算することを前提とする再生計画案が認可されました。なぜ裁判官が認可決定をしたかは全く分かりませんので、もしかすると私が考えた理屈とは全く違う理由があるのかもしれません。しかし、とにもかくにも、依頼者にとって有利な計算方法が例外的に採用されたという事実は間違いないので、申立代理人としては一つ有益な仕事ができたと自負する次第です。