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当事務所に依頼された借金問題を解決した方の声をご紹介します。
K様
<概要>
(1)事案の内容
ご依頼者様は短期間で高級外車の乗り換えを繰り返し、支払い不能(※1)になってしまった方でした。一番初めは、自動車がなければ生活が困難な地域に住んでいたことから、必要な範囲で中古の外車をローンを組んで購入し、順調に毎月の給与の範囲内でローンの支払いを行っていました。しかし、その自動車に不具合が生じたことをきっかけに、より良い自動車に乗りたいという欲をもち、少し背伸びをした高級外車に乗り換えました。もっとも、乗り換えた自動車もローンを組んで購入し、この自動車のローンの支払いも毎月の給与の範囲内で行っていました。ところが、昨年より猛威を振るい始めた新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ご依頼者様の給与は下がり始めました。そうであるにもかかわらず、高級外車を乗る中でより良い自動車に乗りたい、新しい自動車に乗りたいという欲をもっていたご依頼者様に、自動車販売の営業担当が、新しい自動車の購入を勧めたことをきっかけに、ご依頼者様は乗り換えてそれほど時間が経っていないのに、さらに高級外車に乗り換えることとしたのです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響がなければ、ご依頼者様はさらに乗り換えた自動車のローンを支払うことができたのかもしれません。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響はご依頼者様の想像をはるかに超えており、新しい自動車を購入した直後、ご依頼者様の職場の仕事量が大幅に減り、それに伴って毎月の給与も大幅に下がってしまったため、ご依頼者様はたちまち支払い不能(※1)に陥り、弊所にご相談くださいました。
【※1】支払い不能
破産の手続きが開始する要件の一つ。
債務者が、支払い能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態・・・をいう(破産法2条11号)。
(2)ご依頼者様の希望
毎月の給与から自動車のローンを支払うことができないので、破産手続きをしたいとのことでした。
(3)方針の決定
みなさま、「破産」という手続きにどのようなイメージを持っておられるでしょうか。借金が簡単に帳消しになるというイメージをお持ちの方、日常生活に多大な不利益が生じるのではないかというイメージ(ご不安)をお持ちの方、さまざまかと思います。
たしかに、破産の手続きにおいて裁判所が免責許可決定を出せば、対象となっている債務についてはそれ以上返済をしなくてよくなります。しかし、裁判所という国の機関が、国民個人の債務について「返済しなくてよい」と判断することは、その影響力の大きさに鑑みれば簡単なことではありません。たくさんの必要書類を提出しなければなりませんし、どうして支払い不能に陥ったのか、支払い不能に陥ったことについて現在どのように考えているのか、免責許可決定が出た場合それ以降どのように生活していくつもりでいるのか等、様々なことを裁判所に説明をして、裁判所が「それならこれまでの債務は返済しなくてよいとして生活の立て直しをしてもらおう」と考えるまで説得する必要があります。
他方、破産手続きをすることによって、その後7年間は新たに破産手続きができない(破産法252条第1項10号参照)とか、ローンの審査に通りにくくなるといったことはありますが、たちまち職場やご近所さんに破産手続きを行っていることが知られるなど、日常生活に多大な不利益が生じるということは考えにくいといえます(もっとも、一部の職業については一定期間制限を科されるということがあるので、詳しくは弁護士にご相談ください。)。
ご依頼者様は、破産手続きについて特に前者のイメージ(借金が簡単に帳消しになるというイメージ)を強くお持ちでしたので、破産手続きをとるとなれば我々は申立て代理人として精一杯お仕事させていただくが、やはりご依頼者様自身、破産手続きは簡単なものではないことをご理解いただきたいということ、裁判所を納得させるため自身の手続きであることの自覚をもって、たくさんの書類を提出したり、裁判所との約束は書類の提出期限ひとつをとっても必ず守らなければならないということ等を丁寧にご説明させていただきました。
また、ご依頼者様の場合、短期間で高級外車を2回も乗り換えていることが「浪費」にあたり、原則としては「免責不許可事由(※2)」に該当するため、「裁量免責(※3)」を得られるように手続きを進めていかなければならないことから、さらに破産手続きはハードなものになるということもご説明させていただきました。
ご依頼者様には以上をご理解いただいたうえ、破産手続きを行うということで方針決定いたしました。
【※2】免責不許可事由
破産法252条1項で定められていて、各号のいずれかに該当すれば原則として免責許可決定が出されないことになるものです。
同項4号では浪費行為が免責不許可事由として定められています。
「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」
【※3】裁量免責
破産法252条2項で定められていて、同条1項各号のいずれかに該当する場合でも例外的に免責許可決定が出される場合をいいます。
「前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は破産手続き開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。」
<解決>
先程述べたとおり、今回のご依頼者様の場合、短期間で2回も高級外車を乗り換えたことが原因で支払不能に陥っているため、ご依頼者様の行為は「浪費」にあたり、原則として免責不許可事由にあたることはやむを得ませんでした。
そこで、例外的に裁量免責を獲得するため、まずはご依頼者様にどうして支払い不能に陥ったのか、支払い不能に陥ったことについて現在どのように考えているのか、免責許可決定が出た場合それ以降どのように生活していくつもりでいるのか等を考えて、「反省文」を書いていただくこととしました。しかし、いざ反省文を書くとなれば、なかなか考えを文章化するというのは難しいことです。そこで、申立代理人として、さらに進んでご依頼者様のお考えを深く掘り下げ、ご自身の言葉で反省の気持ちを文章化できるようお打ち合わせをさせていただきました。
また、申立代理人としても、裁判所に対して、ご依頼者様の免責不許可事由該当行為(浪費)は悪質なものではないということや、収入が大幅に減少したことはご依頼者様としては如何ともし難い事由であったこと、ご依頼者様が反省しており、今後の生活の立て直しが可能であること等、裁判所が免責許可することが相当であるという事情説明・意見を提出いたしました。
これらの活動が功を奏して、無事にご依頼者様に免責許可決定が出され、ご依頼者様は新たな生活の一歩を踏み出すことができました。
<まとめ>
今回のご依頼者様は、支払い不能になってすぐご相談に来てくださいましたので、支払い不能の状態が悪化することなく、無事に免責許可決定も出て、現在、新たな生活を始めておられます。債務整理のご相談は躊躇われる方が多い印象ですが、手遅れになってしまえば本来可能であったはずの生活の立て直しが不可能になってしまい、現在お困りの状況よりもさらに大変な状況になることもあります。
弁護士にご相談いただきましたら、新しい道が開けるかもしれません。お気軽に一度、ご相談いただければと思います。