債務整理をする前に車や家の名義を変えたらどうなる?
借金で首がまわらず、どうしようもない場合に考える手段として「債務整理」があります。債務整理を行うにしても車や家を手放したくないといった想いは、人情としてあるのではないでしょうか。一口に債務整理といっても手続によってその内容が異なります。そのため、債務整理の手続として具体的にどの手続を利用するかにより、車や家の名義を変えた場合の影響の大きさに違いがあります。この記事では債務整理をした場合の財産名義の変更の影響についてご説明いたします。
債務整理とは?具体的にどのような手続があるのか?
債務整理とは借金の返済に困った場合に、借入状況、収入、資産、生活の状況(独身なのか、配偶者や子供はいるのかなど)に応じて、借金を整理することにより生活の再建を図ることをいいます。また、その具体的な手続につきましては、任意整理、自己破産、個人再生、特定調停があります。
任意整理とはどのような手続か
任意整理とは債務整理の手続(任意整理、自己破産、個人再生、特定調停)の中で、唯一裁判所が関与することがなく、借金の整理をする手続です。「任意」で「整理」するとの名称のとおり、具体的には、直接、各債権者(主として、クレジット会社などの信販会社、サラ金業者などの貸金業者)と借金の減額、将来の利息の支払いの免除、返済期間の延長などを交渉します。また、すでに返済を滞納しており、遅延損害金が発生している場合には、遅延損害金の支払いを免除するように交渉するといったことも行います。
今後の生活再建を考えると、すべての債権者(貸主)と交渉する方が望ましいですが、債権者の種類、その借金額、生活の状況等により、対応が異なってきます。複数ある債権者のうちの一部の債権者と任意整理の交渉を行う場合もあります。ただし、信用情報等の確認により、債権者が、他に債権者がいることを知っている場合があり、デメリットを受ける債権者と受けない債権者があることになるため交渉が難航する場合もあります。
今後の生活再建を考えると、すべての債権者(貸主)と交渉する方が望ましいですが、債権者の種類、その借金額、生活の状況等により、対応が異なってきます。複数ある債権者のうちの一部の債権者と任意整理の交渉を行う場合もあります。ただし、信用情報等の確認により、債権者が、他に債権者がいることを知っている場合があり、デメリットを受ける債権者と受けない債権者があることになるため交渉が難航する場合もあります。
自己破産とはどのような手続か
自己破産とは借金の弁済ができないことを裁判所に疎明(説明)することで、借金などの債務を法的に免除してもらう手続です。あとに説明する個人再生との違いは、借金を免除してもらい生活の再建をすることを目的とすることから、社会生活上の資格の制限(警備員の職業に就けない、士業の登録ができない、会社の役員の退任事由などに該当します。)を受けることとなります。
また、自己破産の場合には原則として持ち家や車などの私有財産がある場合には、売却を行い、その所有権を手放す必要があります。なお、イメージとしては、目ぼしい財産がない場合(例えば財産の合計が20万円以下の場合など、各管轄の裁判所によって運用がことなるため一概にはいえません。)には、破産手続が開始されるとともに破産手続が完了します。
一方で、一定の私有財産(持ち家や車など)がある場合には、これらは破産手続のなかで売却され、その換価された費用によって借金に充当されます。破産手続きの中で弁済できない借金がある場合でも、破産手続が完了すると弁済を免除されることが原則です。ただし、不法行為による損害賠償債務、税金関係等の債務は免除されません。
また、自己破産の場合には原則として持ち家や車などの私有財産がある場合には、売却を行い、その所有権を手放す必要があります。なお、イメージとしては、目ぼしい財産がない場合(例えば財産の合計が20万円以下の場合など、各管轄の裁判所によって運用がことなるため一概にはいえません。)には、破産手続が開始されるとともに破産手続が完了します。
一方で、一定の私有財産(持ち家や車など)がある場合には、これらは破産手続のなかで売却され、その換価された費用によって借金に充当されます。破産手続きの中で弁済できない借金がある場合でも、破産手続が完了すると弁済を免除されることが原則です。ただし、不法行為による損害賠償債務、税金関係等の債務は免除されません。
個人再生とはどのような手続か
個人再生とは自己破産と同様に借金を返済していくことができないときに、裁判所に借金が支払い不能である事実を疎明する手続です。自己破産との違いは、利用できる借金の総額が5000万円以下である必要があります。また、自己破産とは異なり持ち家を手放すことなく経済的な再生を図ることが可能です。借金については再生計画認可された場合、再生計画にもとづいた弁済をすれば、原則的には借金が残ったとしても弁済が免除されます。
特定調停とはどのような手続か
特定調停とは、この記事で既に照会した任意整理について裁判所が関与するといったことをイメージするとわかりやすいと思います。具体的には裁判所において調停委員とよばれる人が間に入って、債権者(クレジットカード会社、貸金業者など)と交渉を行うことで借金の減額や弁済期間を延長することでの弁済上の負担の軽減を図ります。
名義変更しても問題ない?バレなければ平気?
債務整理を行う場合に、その前後に持ち家や車の名義を変更することはできますが、安易に名義を変更することは危険です。持ち家について債権者からの強制執行等を免れる目的で、知人などに協力してもらい名義変更した場合には、破産等に移行した時に、免責不許可とされること、「責任財産を積極的に減らす行為」として裁判所の関与のもと名義変更を取り消されるといったこともあります。極端な例かもしれませんが、ある芸能人が、詐欺で多額の金銭を受け取り、詐欺により返済することを嫌い、資産のほとんどを渡して妻と別れたことで、強制執行妨害罪で逮捕されたというのは有名な話です。
責任財産とは、債務者の財産を指します。一般に持ち家などは資産価値の高い財産ですので、こうした財産を他人の名義にするなどの行為は、売却価格の妥当性があるかということに問題が出ることになります。
バレなければ平気かというとそうとは言い切れません。そもそも、持ち家や車の名義については公的機関に登記・登録されていることなので、調べればすぐに名義変更の事実が債権者にわかります。こうした場合、自己破産や個人再生の場合は、悪質さの度合いにより免責不許可となったり、手続が続けられなくなります。任意整理の場合には債権者が交渉に応じてくれなくなる可能性があります。
責任財産とは、債務者の財産を指します。一般に持ち家などは資産価値の高い財産ですので、こうした財産を他人の名義にするなどの行為は、売却価格の妥当性があるかということに問題が出ることになります。
バレなければ平気かというとそうとは言い切れません。そもそも、持ち家や車の名義については公的機関に登記・登録されていることなので、調べればすぐに名義変更の事実が債権者にわかります。こうした場合、自己破産や個人再生の場合は、悪質さの度合いにより免責不許可となったり、手続が続けられなくなります。任意整理の場合には債権者が交渉に応じてくれなくなる可能性があります。
持ち家の名義変更の場合はどのようなことがあるのか?
持ち家の場合、多くは住宅ローンを組んで購入することからその持ち家に担保(抵当権)がついています。そのため、仮に他人へ持ち家の名義を変更したとしても、借金(住宅ローン)を弁済しない場合には担保権を銀行などの金融機関が実行し強制的に売却されてしまうこととなります。ですから、通常はそのような不動産は誰も買ってくれません。
車であれば名義変更しても問題ないか
車であれば名義変更しても問題ないといったことはありません。この記事で紹介しているどの債務整理の手続きをとった場合であっても、財産を隠す目的から名義変更を行うことはお勧めできません。
仮に財産を隠す目的がなかったとしても、債権者側からみるとそうした債務者の行為は「不誠実」とうつることから、借金の負担の減免などの交渉の際などに協力を得られなくなる可能性が高まります。
任意整理であれば裁判所が関与しないので名義変更をしても問題はないといった趣旨のことが述べられています。しかし、上記で説明したように、こうした行為は債権者からすると信用できない債務者と映る可能性があり、また、法的にもその名義変更の有効性が否定される可能性があります。
仮に財産を隠す目的がなかったとしても、債権者側からみるとそうした債務者の行為は「不誠実」とうつることから、借金の負担の減免などの交渉の際などに協力を得られなくなる可能性が高まります。
任意整理であれば裁判所が関与しないので名義変更をしても問題はないといった趣旨のことが述べられています。しかし、上記で説明したように、こうした行為は債権者からすると信用できない債務者と映る可能性があり、また、法的にもその名義変更の有効性が否定される可能性があります。
借金を契約どおり弁済したいけど出来ないから何とかしてほしいというのが本筋
持ち家や車などは愛着があり、手放したくはないといった心理は大変に理解できます。しかし、本来は当初の契約に則り借金の弁済したいんだけど、どうしても弁済できないために、なんとかしてほしいというのが本筋です。債務整理とは、このような本筋があるにもかかわらず、弁済が出来なくなった場合に債権者の協力のもとに弁済負担を軽減してもらうものです。
このような債務整理の目的から、債権者からわからなくするといったことを意図した名義変更はさけるのが良いでしょう。
このような債務整理の目的から、債権者からわからなくするといったことを意図した名義変更はさけるのが良いでしょう。
まとめ
これまでご説明してきたように、債権者から持ち家や車を守る方法としての名義変更については危険がともないます。仮に持ち家を維持したいといった場合には、十分に検討の上、親族の協力等によって、慎重に行動しなければなりません。
また、個人再生であれば持ち家を維持したまま債務整理が可能です。任意整理の場合であっても、債権者の理解が得られれば、車、家を売却しなくて済むといった可能性があります。いずれにしましても、債務整理をおこなう場合には生活状況を総合的に考えてどのように進めることが最適かについて弁護士などに相談することをお勧めします。弁護士であれば法律の専門家として、持ち家や車を残したいといった気持ちを尊重した任意整理を行うことが可能です。
また、個人再生であれば持ち家を維持したまま債務整理が可能です。任意整理の場合であっても、債権者の理解が得られれば、車、家を売却しなくて済むといった可能性があります。いずれにしましても、債務整理をおこなう場合には生活状況を総合的に考えてどのように進めることが最適かについて弁護士などに相談することをお勧めします。弁護士であれば法律の専門家として、持ち家や車を残したいといった気持ちを尊重した任意整理を行うことが可能です。